章 49

彼の毛皮はとても柔らかい。怖いくせに、ものすごい高揚感! 風が髪を吹き抜け、すごく自由な気分。まるで映画の主人公が、狼人間の恋人と永遠に一緒になるために逃避行しているみたいだ……。

ただ現実は、別の……危険な狼人間から逃げている真っ最中。しかも、狼人間の恋人の背中に乗って……存在さえ知らなかった狼人間のキャンプへ向かっているのだ。

全然ロマンチックじゃない。

それに、いつなんどき、どこからともなく危険な狼人間が飛び出してくるかもしれないという現実もある。

全然安心できない。

やがてアレックスの俊敏さがリタを追い抜き、アクション映画の新幹線さながらに、私たちを森の奥深くへと導いていく。ただ、最...

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